32型シアター

32型のテレビで見た映画とその周辺のブログです。

はじまりへの旅/Captain Fantastic

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作品紹介

 はじまりへの旅/Captain Fantastic
 2016年 アメリ
 時間:111分
 ジャンル:コメディ、ドラマ IMDbより 

 

 監督:マット・ロス
 ベン・キャッシュ:ヴィゴ・モーテンセン
 ボゥドヴァン“ボゥ”キャッシュ:ジョージ・マッケイ
 キーラー・キャッシュ:サマンサ・アイラー

あらすじ

アメリカ北西部の森の奥深くで、6人の子供と暮らしているベン・キャッシュ(ヴィゴ・モーテンセン)。子供たちは社会と接点を持っていないが、厳格なベンが課す特訓と熱心な教育によって全員がスポーツ選手並みの体力を誇り、6か国語を自在に話し、長男に至ってはあらゆる名門大学に合格していた。そんな中、入院していた子供たちの母レスリーが他界し、一家は葬儀が行われるニューメキシコへ向けて旅に出ることに。およそ2,400キロメートルもの長い道のりを行く彼らだが、世間知らずゆえに先々で騒動を起こしてしまう。

                             シネマトゥデイ

日本と世界の評価

評価

 Yahoo!映画:3.80 評価841件   2019/10/10
 IMDb7.9(評価5換算:3.98) 評価165150件 2019/10/10
 Rotten Tomatoes 2019/10/10
  TOMATOMETER:82% 評価217件
  AUDIENCE SCORE:85% Average Rating:4.03 評価22040件
 Metascore:72  

 Yahoo!映画とIMDbとRotten Tomatoes:AUDIENCE SCORE

 単純平均評価:3.94

評価まとめ

 良い評価:傑作、最高、深い、成長物語

 悪い評価:児童虐待、嫌悪感、受け入れられない

評価は高いですね。日本はアメリカに比べると低いです。Top 1000 Votersの評価が0.9も下がっているけどTOMATOMETERはそれなりに高いです。若い人ほど評価が高いです。男性より女性票が高いのは意外かな。

感想

アメリカの山奥で自給自足をしながら6人の子供を育てていくあらすじの通りの物語です。凄い話です。極端を突っ走るアメリカ白人らしい話です。
北の国からで北海道に移り住んだジュンとホタルは結構ブーブー言ってましたがこちらは生まれた時からです。
冒頭に長男が鹿を仕留めて父親から今日から「お前は男だ」と認められるシーンは人類滅亡してから何年後の世界なんだろうと思っていたらどうやらこれは現代社会の物語であることが分かり驚愕の展開。


しかもこの父親サバイバル術だけじゃなく哲学や文学、アメリカの権利章典を読むだけじゃなくそれを叩き台に自分の考える力を鍛えていくような記憶力に頼るだけじゃない教育を施していきます。
しかもタブーは無し幼い子供に性交とは何かを聞かれても逃げずにきっちり教える徹底ぶり。この家の合言葉?モットーは「人民に力を権力にはノーを」です。アナーキーなヒッピーの極致のような生活です。


そんな折入院していた母親が死んでしまいます。死因は自殺。子供には言いづらいですね。子供としたら母親の愛情を疑ってしまう様な出来事。
しかし父親のベンは自殺であることを隠しません。なにか子供との信頼関係を感じさせるようなシーンです。
ここから義父が取り仕切るキリスト教式の葬儀に向かい仏教徒だった母親の遺言である火葬にして遺灰をトイレに流して欲しいとの願いをかなえるべくバスで旅立つロードムービー


この旅が子供たちにとって文明と初めて接する機会です。
ここら辺の描き方が面白く興味深い。と「興味深い」はこの家族では禁句です。自分の言葉できちんと説明する。曖昧な言葉で逃げてはだめだという事です。
耳が痛いです。


例えば人込みを始めて見た子供たちの反応はこの人たちは病気なの?
デブ大国アメリカのマジョリティたちの太り方に驚きます。
子供達の素朴な疑問はコメディ的にも感じるしアメリカの病理の様にも映り面白いです。
他にも長男のボウは旅の中で知り合った同年代の女性と初キスをして相手の母親に咎められると突然、プロポーズをします。相手親子に笑われるボウ。でもボウは本気。
女性免疫が無いからというのもありますが、それは別に普通の人でも起こりうることで。飲む打つ買うはどんなに勉強をしても人生経験を積んでも道を踏み外してしまうほどに危険であることを監督が分かっていて表現したかったのかなと感じました。
色恋は魅惑的であると同時にリスクをはらんでる。それは教育では予防できないからこそ魅惑的でもある。


そんな未知との遭遇を通じベンの教育の限界を感じたり、子供たちの内面の変化を感じたりそれは山の中にいては分からない出来事です。
この親の普通じゃない教育方針に嫌悪感を抱くようなコメントが多かったのが比較的に日本評価が低かった理由でしょうか。
でも普通って何でしょうかね。自分は普通の教育を受けたかというと分からない。どちらかと言えばほったらかしだったように思うのでこの映画のような教育は少しうらやましい。子供が大人になった時に身に付けさせたいものは親によって違う。サバイバル技術かもしれないし、ソロバン1級かもしれないし、愛情や人を思いやるとか形にならないものかもしれないし、コーラは骨が溶けるから飲ませないとかのなんじゃそれみたいなものまで多種多様すぎて何が普通か、何が正解かは分からない。


それでも親の本気度や必死さは子供に伝わるのではないでしょうか。
ベンに本気度を感じたからこそ子供は戻って来たのでは。
ただもっとこの教育に強さを持たせて欲しかった。
この映画でプラトンの国家が出てますが、プラトンに洞窟の比喩というのがあって洞窟の奥で人は手足を縛られた状態で燃える炎が映し出す実体の影を本物と思って見ている。でも後ろを振り向き洞窟を出ると初めは眩しくて見えなかったものがだんだん目が慣れ見えてくるとそこには影ではない実体が。
みたいな話なんですが、せっかくベンの教育を受けて目が開いたような状態なのに洞窟に戻ると暗すぎてぶつかりまくるみたいな本末転倒になっている。
それが面白みやコメディ感、人生の難しさ奥深さにもつながるのですが、教育の強さはいまいち出てないかな。
洞窟の奥で縛られて影を見てる人におもねったみたいなラストは少し残念かな。
でも面白かったので+0.1点で4.04点とします。

 

                                                                                 評価  4.04点